君の瞳‐ヒトミノオク‐



「あたし帰んなきゃ、またね」

「え、礼央もう帰んの!?」

「迎え来たみたいだし。
 その写メあとで送って」

「おいっ!!」


 手を振って、部室を出た。

 …今日、弓道部は部活やってんのかな。

 ちょっとだけ寄ってみよう。

 ゆっくりと確実に弓道場に向かう。

 部活は終わってるみたいだけど…やっぱり、いた。

 凛とした横顔を見るだけで、また頑張れる気がした。


「予選突破したよー」


 小声で伝えてみる。

 優介は気付かないけど、それでいい。

 ただ言いたかっただけだから。


「優介も頑張れ…」


 あたしは優介のこと知った日から、ずっと応援してる。

 この気持ちは誰にも負けないんだよ?

 けどさ、1番は優介の幸せだから…

 とりあえず、別れさせないとね。

 あと1週間とちょっと。

 県大会も後だし、もっと動きやすくなる。

 それまで我慢してね…。

 そっと、気付かれない内に離れた。

 明日はゆっくり休んで、月曜に備えなきゃ。

 …もっと大きいことしてきそうだし。

 まあそれはそれで好都合なんだけど。

 あたしのエサになるだけだし。





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