空唄 ~君に贈る愛のうた~
「よっ……う」


見慣れた後ろ姿へ、肩で息をしながら名前を呼ぶ。

けれど遥は何の反応も示さない。


「よう……?」


不安になってもう一度名前を呼ぶけど、やっぱり遥は何の反応もしない。

でこぼこな河原の石の上を、一歩一歩歩いていく。

風が小さく吹いたけど、遥の黒い髪はなびいてはいなかった。

遥のそばまで行った時には、やっと息も落ち着いてきて、普通に喋れるほどだった。


「遥、どうしたの?私の名前……呼んだのは遥だよね?」


そう遥に向かって問いかける。

けれど、どれだけはなしかけても、こちらを見ようとしない遥が
無くしたかったはずの不安を、また更に強めた。

目頭が熱くなってくるのがわかった。

泣いてしまわないように、きゅっと唇を噛み締める。


「ねぇ、遥?返事してよっ」


そう口にした途端、涙がせきをきったように溢れ出した。

それと同時にぐい、っと手を引っ張られて
花音が気づいた時には遥の腕の中にいた。


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