空唄 ~君に贈る愛のうた~
「遥……?」


顔を見ようと頭をあげようとしたけど、痛い程きつく抱きしめられてるので向くことが出来なかった。

目の前の遥の華奢な胸に、確かに暖かい温もりを感じた。

けれど、遥の鼓動は壊れたおもちゃのように全く動いてはなかった。


「花音」


遥はやっと腕を緩めて、両手で花音の頭を包み込む。

やっと遥と目があった。

はじめて会った時以来、まじまじと見てなかった気がする。

あんなに毎日いたのに。

灰色の双眸は相変わらず何もかも見透かしてしまいそうだった。

でも今日は瞳の奧に悲しみの光が宿ってることに気づいた。



あぁ、

遥はここにいるのに
温もりを感じるのに
なんで、
なんで幽霊なんだろう。

こんなにそばにいるのに、なんでどこか手の届かない存在なんだろう。






「花音。俺な、全部思い出したんだ」

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