空唄 ~君に贈る愛のうた~
「えっ?」

「俺、生きてた頃の記憶がなかったんだ。
だけど花音と出会ったあの日から、毎日夢を見るようになった。
幼い頃よく遊んだ公園、毎年夏に行ってたばあちゃん家。……それに、中学生の俺が自殺をするとこも」


そこで遥は一旦息をついた。

花音はそんな遥から目が離せずに、ずっと見つめていた。


―遥はなんでいきなり、こんなことを言うの?


何故だかわからない。

さっきから胸の中でざわざわと不安が騒いでる。


「俺、自分がなんでここにいるか謎だったんだ。
だって、正直あの頃は死ぬことになんの恐怖もなくて……むしろ、生きていくことの方が絶望だった」

「遥っ?何が言いたいかわかんないよ……?」


遥の言葉を遮って、花音は泣きそうなのを堪えながら口を挟んだ。

乾ききらない涙が、また一筋頬を伝う。


だってだって。

さっきから何を言ってるか、わからない。

だって、まるで



お別れみたいで――……


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