空唄 ~君に贈る愛のうた~
「ごめんな。もうあまり時間がないんだ」

「……時間がない?それって、」


その異変にすぐに気づいた。

遥の左手が透けて、その向こうの景色が見えていた。

指先から、じわりじわり手のひらへとそれは広がっていっている。


「遥、これっ」

「うん、そゆこと。花音お願い。俺のはなし最後まで聞いてくれる?」


この状況に不釣り合いなくらいの笑顔で遥は言った。

花音はただ、こくりと頷くことしか出来なかった。





花音のすきな、いつもの遥の笑顔だった。

いつもだったら、それだけで幸せな気持ちになれてたはずなのに。

今日は逆に切なくて。

胸が軋むくらい、きゅっとなった。




消えそうな遥の存在を少しでも留めておきたくて手を握ると、遥も応えるように強く握り返した。

そんな些細なことでもうれしくて、遥を見て花音も笑う。

そんな花音を見て、安心したように頷いた。



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