空唄 ~君に贈る愛のうた~
「俺が俺なりに考えついた理由があってさ。
俺は何か心残りがあるからここにいるんだって。
んで、思い出した。俺がなんでここにいるかを」


この先を聞きたいような、聞きたくないような複雑な気持ちになった。


―これを聞いたらきっと、遥は……


そう考えると、先ほどから流れている涙が余計に止まらなくなる。

顔をうつむけたくなる。


だけど、最後まで聞くって言ったから。

遥のお願いを聞けない訳がない。


涙を拭って、遥の目を見つめる。

灰色の、その瞳にはなんの迷いもなくて花音を落ち着かせた。




「花音、俺

花音が好き」



いつも余裕そうな遥が照れくさそうに告げたのは、愛の言葉だった。


―へっ……?なんて言った?


状況がのみこめず、ぽかんとしていると


「驚いた?
……てか、無反応なの?」


苦笑して言う遥を見て、ようやく何を言われたのかがわかった。





好き

自分が遥にたいして抱いているのと、おんなじ気持ち。

それを今、遥は自分にたいして言ってくれた。
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