空唄 ~君に贈る愛のうた~
「ほんとに……?」


「嘘ついてどーすんの」



出会った時みたいに、たのしそうに遥は笑った。



「夢じゃない?」

「夢じゃない」


「遥」

「んっ?」


「私も、好き」

「うん。知ってる」



えっ?と顔をして見せると、いたずらっ子みたいに舌をだしてみせた。


「だってキスしても嫌がんなかったし」


意地悪な時の遥の笑顔は一段とたのしそうだった。

否定出来なくて、むーと口を尖らせた。


「花音はかわいいな」


なんて言いながら、そんな花音の頭を右手でやさしく撫でる。

うれしくて仕方なかった。





甘い一時も束の間、遥の異変が急に加速した。

左手だっけだったのが右手にまで現れて、撫でていた手の感触が曖昧になった。

どうしようもできないその異変に、泣きたくなるのを我慢して必死に遥の手を包む。

少しでも遅くなればいい、なんてことを考えながら。


「やっばいな。早くはなさいと」


そうひとりごちて、遥ははなしを続けた。
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