空唄 ~君に贈る愛のうた~
「あは、遥って変わってないんだな」


自分が知ってる遥と、この手紙を書いた遥は紛れもなく同一人物なんだ。

なんて思うと不思議な気持ちになった。

この頃の遥を、私は知らない。

だけど、幽霊として出会った“今”の遥とどこかしら繋がってた……
そう考えると、この頃の遥のことをまるで知ってるみたいにわかるように感じた。



次々と手紙を読んでいく。

他愛もないはなし。

今日の夕飯はオムライスだったとか、国語の時間に怒られたこととか。

それでも気づかってくれてるのがわかって、自然と笑顔になる。


―もしかしたら読まれなかったかもしれない手紙なのに。


たくさんの言葉たちは、花音を心にひとつひとつ染み込んだ。

こう書いては違うと、何枚も何枚も書き直してる姿が浮かぶ。


「遥ならあり得そう」


1人くすくすと笑いながら手を伸ばすと、手紙はそれが最後の1通になっていた。

いちばん新しいそれを破かないようにそっとあける。

かさっと音をたてて開くと、そこに昔より幾分増しになった字が見えた。
< 126 / 141 >

この作品をシェア

pagetop