空唄 ~君に贈る愛のうた~
それからの日々は、ただなんとなく過ぎて行って。

気づいたら秋が来て、
冬もやって来て
新しい時代も迎えた。

そうやって冬も越えて
温かな春になった。

目まぐるしいくらい早く時は過ぎて行ったけど、どれだけ時間が経っても遥への手紙は書き続けていた。

いつかひょっこり、遥が帰ってくる気がして。

まとめて渡すのもありかなぁ、とか考えてたり。


「なーんて言ったら、笑われるかな」

「なにがー?」


ひとりごちたのが、歩美にも聞こえたらしい。

怪訝そうに問う歩美に、


「なーんでーもなーい」


ふざけて答えると「なんだそりゃ」と毒づいたのが聞こえた気がするけど、気にしない。

空を見上げると抜けるように高くて青くて。

4つある季節の中で、いちばん好きな空。

1年前のあの日、
君に出会った夏がまた巡ってきました。


「てかさ、あんた夏嫌いじゃなかったっけ?いやに元気じゃん」

「んー?うん、今は好きだよ。いっちばんね」

「ふーん」


歩美には遥のこと全部はなしてるから、きっとわかったんだろうな。

私が夏を好きになった理由が。

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