空唄 ~君に贈る愛のうた~
そう言ってお兄ちゃんは、近くの木陰のベンチに私を座らすと
自販機の方へ走って行った。

背中を送りおえ、意味もなく足をぶらぶらさせてみる。

蝉の鳴き声が嫌になる程、耳につく。

この前どれくらい蝉はいるの?って尋ねて、お父さんたちを困らせたっけ。

なんて考えていると、自分に覆い被さるように影がかかった。

帰ってきた、と思い勢いよく顔をあげると、そこには見たこともないおじさんが立っていた。


―誰?


満面の笑みを向ける相手を間違って、中途半端に笑っていたら


「お嬢ちゃん、一人?」


不自然な笑みでそう尋ねてきたおじさんに、違和感を覚えながらも


「ううん、一人じゃないよ。お兄ちゃんは今ジュース買いに行ってるの」

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