空唄 ~君に贈る愛のうた~
「そうなんだぁ……」


言いながら男の手には、きらりと光る何かが握られていた。

私はそれが何だかわからなくて、きょとんと見上げていた。


不思議と景色はスローモーションに流れて
その正体がナイフだとわかる頃にはもう、それは目の前で―


「花音っ!!」


お兄ちゃんの叫ぶ声。

きっとこの声の感じから、ひどく取り乱してるんだろうと思う。

けど、姿は見ることが出来なかった。

だって、私は自分の身に起こっていることに釘付けだったから。








ぐさっ……


はじめて聞く、人にナイフが刺さる音。

やけにリアルに耳に届いて、逆に現実味を帯びていない。

男がナイフを引き抜くと同時に、溢れ出す鮮血。



ばたんっ
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