空唄 ~君に贈る愛のうた~
そんな私を見て悲しいくらい、切ない微笑みをした。


「かのん、ごめん……な……」


そう告げた途端、握られていた手は力をなくし
重力にならって下についた。


「おにい、ちゃん……?」


生きたように微笑んだまま、けれど、もう二度と目が覚めることのない顔をじっと見つめる。

ちょっと前から涙がずっと、止まらない。

視線をさ迷わせて自分の手を見ると、血で真っ赤になっていた。

それを見ていると、何故か気が遠くなって、お兄ちゃんに寄り添うように倒れた。

瞼がひたすら重く、頭の中は何も考えられなくて、すっと目を閉じる。


遠くからサイレンが聞こえてきた。

どうやら、誰かが通報したみたいだ。


―目を開けなきゃ、お兄ちゃんを助けてくださいって言わなきゃっ……



そう思うのに、ぐんっと何かに引っ張られるように私は意識をなくした。





目覚めた時には、悲しみが待っているとも知らずに―……



< 71 / 141 >

この作品をシェア

pagetop