空唄 ~君に贈る愛のうた~
―あれからもう8年かぁ……


バイトからの帰り道。

ふと、そんなことを考えてみる。


目が覚めたのは、病院のベッドの中だった。

私が目覚めたことに両親は涙を流して喜んでたっけ。

でも、それと同時になんとなく伝わった

お兄ちゃんの死……。




いろんなショックから、私は事件までの記憶をなくした。

それまでのことは、思いだせない。

……あの事件のことは、嫌にはっきり頭に残ってるのだけど。

母や父からの話と、兄が書いていた日記だけが
私の消えた過去を知る唯一の手段。

毎日一緒に遊んでもらったことも、お兄ちゃんのギターが好きだったことも
全部聞いたはなし。

でも話を聞いていく度に、少しずつ思い出せるようにもなっていた。

私が泣いてしまった夜に、ずっとそばにいてくれたこと
母の日にカレーを作ったこととか。

後、いつもの公園で3人で遊んだこと……

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