空唄 ~君に贈る愛のうた~
「花音さ……もしかして、小さい頃のこと。覚えてない?」

「えっ、うん。8歳より前の記憶がないの」

「ふーん……」


遥は、また真剣な顔で考え込むような素振りをする。


「ねっ、なんで知ってるの?覚えてないってこと……」


遠慮がちにたずねると、遥はいつもと同じ調子に戻って


「なぜでしょー?」


と意地悪そうに、にやっと笑いながら花音の髪をくしゃくしゃと撫でた。


「もうっ、誤魔化すなぁ!」


遥の手を振り払おうとした、その手をぱしっと握られて
花音の心臓がどきっと音をたてた。


「なっ、どうしたの?」


こっちのことなんかまるで無視みたいに、遥はそのまま手を繋ぐと


「花音……」
< 78 / 141 >

この作品をシェア

pagetop