空唄 ~君に贈る愛のうた~
泣きたくなるくらい、切ない声で名前を呼ばれるだけで
胸がぎゅうっと締め付けられる。


「うん、何?」


繋いだ手が離れないように、少し強く握ると
遥もそれに応えるように握り返してくれる。

離れたらそのまま遥がいなくなっちゃうんじゃないか……
そんな恐怖にも似た気持ちがとりとめもなく溢れてきた。


「花音……はるかって男の子のこと、覚えてない?」

「えっ……?」


遥の口からでた、予想外のその名前に驚いた。


私の夢にでてきた男の子、


はるかくん――


そのはるかくんを、なんで遥は知ってるの?


「遥、なんでその子のこと……?」


びっくりしていて、それ以上言葉が続かなかったが
遥は寂しそうに、にこっと笑うと


「覚えては、ないんだね」
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