空唄 ~君に贈る愛のうた~
「……のんっ、花音?」

強く名前を呼ばれて、はっと我に返る。

一誠が心配そうな顔をして、こちらを覗きこんでいた。


「あっ……ごめんっ!ちょっと考えごとしててさぁ~」


今はバイト中。

と言ってもピークは過ぎた後なので、お客さんも1人しかいなくて暇だった。

笑顔を作って言うと、まだ納得してない一誠だけど
それ以上は何も言わなかった。


―私、キスしたんだ……


そっと唇に触れる。

まだなんとなく感覚が残っていて、変な気持ちだった。

嫌とかじゃなくて、むしろうれしいみたいな……


「なんだよ、お前。ぼーっとしたり、にやにやしたり」


一誠が心底呆れたように言うので、花音はぷぅっと頬を膨らませて


「うるさーいっ。いっちゃん人のことより自分はどうなのよ?」

「自分のことって?」

「香織ちゃんのこと」

「はぁっ?!」


香織の名前をだしただけで、一誠の顔はみるみる赤くなっていく。


「いっちゃん、真っ赤……」

「っるせぇ~」

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