空唄 ~君に贈る愛のうた~
「えっ?」

「顔見てたらわかる。最近のお前、たのしそうだもん」


こういう時の一誠はいつも以上に柔らかく笑う。

お兄ちゃんに似て、何故か安心する笑顔――……


「でっ、相手はどんなやつなんだ?」


まるで親のように聞いてくる一誠。

そんな一誠に少し戸惑いながらも、花音は答える。


「子どもっぽいけど、実は男らしくて。その人が笑うと、私までうれしくなるの。それに、」

「それに?」


一旦切った言葉の続きを待っている一誠の方を向いて


「今まで私、お兄ちゃんのことがあっていろんなことに壁作って逃げてた。
人と関わるのもこわくて、お父さんやお母さんともうまくはなせなかった。
でもね、そんな私を変えてくれたの。私にとって安らげる場所を、与えてくれたんだ」


なんて……言い出したらきりがない。

出会って、こんな短い時間で人を好きになるなんて思わなかった。

でも、時間なんかきっと関係ないんだぁ……って思う。

大切なのは、どれだけ自分の心を信じれるかということ。

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