空唄 ~君に贈る愛のうた~
あの後、散々泣いて一誠に家まで送ってもらった。

目を真っ赤にして帰ってきた花音をみて、斗真と由紀恵はひどく心配した。


「大丈夫だから。先に着替えてくるね」


そう言い残して、階段をのぼり自分の部屋に入ると
また涙が滲んでくる。


「だめだぁ……」


わかってたはずなのに、終わりを意識すると胸が軋むくらいに痛んだ。

涙をぐっとこらえ、唇を噛みしめる。

泣いたら、お父さんたちを心配させちゃう。


「泣くな、私……」


ねぇ、遥?

私たちは、これからどうなるんだろう――


こんこんっ、とノックの音が聞こえて


「花音?」


控えめに花音の名前を由紀恵が呼んだ。


「んっ、何?」


泣いてたことがわからないように、できるだけ明るい声で答える。


「少しはなしたいことがあるから、着替えたら下に降りてきてくれる?」

「んっ、わかった」


―はなし……?

少し不思議に思いながらも、すぐに着替えてから部屋を後にした。

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