空唄 ~君に贈る愛のうた~
「はじめの手紙より後のは、私たち読んでないの。それも約束だったから」

「そーなんだ……」


今度じっくり読んでみよう。

はるかくんが私に送ってくれた、言葉たちを。


「それで思い出したんだけど」

「うん?」


手紙をまた封筒にいれながら、はなしの続きを促す。


「はるかくんのの本当の名前は、ようくんって言うのよ」

「えっ?」


びっくりして、手の動きが止まる。


「花音がずっとはるかくんって呼んでたし、漢字も遥って書くから何の違和感もなかったけど……
遥くんのお母さんと話す時、そう呼んでたの思い出して」


そこまではなしを聞いて、頭の中がごちゃごちゃし始めた。

待って待って。

落ち着け、自分。

はるかくんは本当はようくんで、私の幼い頃の仲のいい男の子。

私は彼との記憶を無くし、彼は私の知らない場所で生きていた。

だけど……だけど、自殺してしまって。

自殺って、死んだってことだよね?



もしかして、ようくんって……




遥?

あなたなの――?


< 90 / 141 >

この作品をシェア

pagetop