二度目の"好き"を
初めての"愛してる"を
そんな福野の呼びかけを無視して、ただ黙々と進んでいく。
呼ばないで--
お願いだから、私の名前を呼ばないで。
その低く、しっかりと通る声。
これ以上、あの声で呼ばれてしまったら錯覚してしまう。
『好きだよ』
あの…なにも不安なんてなかった幸せだった過去へとタイムスリップしたような
そんな…甘い錯覚に・・・
「福野のバカ・・・」
どうして、あなたはまた私の前に現れたの-?
どうして、あなたは私の名前を呼ぶの-?
どうして、あなたは・・・
『俺のこと嫌い・・・?』
そんな切なそうに私を見つめるの-?
もう過去の話なのに、もう関係ないのに心の底から湧きおこる複雑な感情。
そんな感情を消し去るように、泣きたくなるような気持ちを抑えながらただ会場の出口に向かった。