私がヒールをぬいだ時
『そろそろランチとりますか?下のレストランで』


『そうですね』


私達は下にあるイタリアンレストランで遅いランチをとった


『編集部には迷惑かけますね…』


『先生のいい環境にいるのが一番なんですよ』


『まあ…理由は聞いてると思うけど…笑うわよね、こんなおばさんが…』


『おばさんですか、先生が?とんでもない。頑張ってる女性ですよ』


『映画に出て来るようなどたキャンされて…』


『漫画家なんですから、それをネタに描く気持ちでいてください』


中々言う人だ…そんくらいでへこんでんじゃねーよ!と言われてるようだ

一気に味がなくなった


『製作発表の前日、東京いらしてください。ホテルとっておきますから。それと、これから月に一度はW県にいって、先生の原稿見るようにします』


『わざわざ?』


『そのくらい当たり前です。広島や九州の先生のところまで、僕は行ってたんですから。W県なんて近いくらいです』


飄々とした顔の青年はニヤリと笑って私を見た



帰りの電車ではG市まで爆睡した


駅におりたとき、クラクションを鳴らされた


白い軽トラだった。近づくと運転席には新伍が乗っていた


『どこか行ってきたのか?』


『仕事で大阪…今からタクシーで帰るねん』


『乗れや、送ってったんで。お前の家ここから真っ直ぐやろ?』


『ええよ、誰か待ってるんちゃうの?』


『今から親父らが南紀のほういくから送ってきたんや。自治会の旅行や。さあ、乗れや』


私は断れなくて助手席に乗った


『なんか見違えるな、化粧してそんなワンピース着てたら』


『あはは、普段化粧せんから自分でもそう思う。ハイヒールかてもう半年ぶりやで』


『におとるよ…タレントさんみたいや』


『あ、ありがとう』


狭い空間、私は窒息しそうだった
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