私がヒールをぬいだ時
『女連中も暇やけど、うちの会社の奴も暇やな…まあみんな蹴落としたいばかりなんやで』


『松見は出世コース望むタイプ違うもんな』


『でもな…傷はついとるで。まあかまんけどな』


『しかし…うらやましいわ…めげずに恋できるあんたが』


『しゃーないやん、男なんやから。好きなもの好きで何悪いんや、ひかるもはよ気持ち切り替えて恋しいや』


松見が言うと正論に聞こえるのがムカつく


別れた男の名前、いつまでも消却出来ずにいる自分が馬鹿らしくなった


私は携帯をとりだすと、松見の前で一人の男のメモリーを消却した


『さるものは追わずや。それでええやん』


そういうと松見は帰って行った


その日はまた康子ちゃんと徹夜になった


朝になり彼女は帰っていく


私は少し睡眠をとるとまたあのハワイアンカフェに足を運んだ


今日は新伍が先にいた


『先月はありがとう。助かったわ』とお礼を言った


『たいした事ちゃう…。ここ座れや』と静かに言った


『すみません、ロコモコとアイスコーヒーください』と注文した


『俺と同じメニューや』


『そうなんや…この前な、同級生とD寺の如月いう店で食べてん。新しいお店なんやな』


『駅の近くやろ?線路渡る前の』


『そう、いったことあるん?』


『あの店、うちの親戚が設計して作った店やから…俺、基礎の時ずっと行ってたんや』


『そうなんや…美味しかったよ。安いし、上品な感じしたわ』


『こっち帰って来て困った事ないか?』


『今の所はな。もう住所もこっちに移したし、細かい事は全部終わった。これ、私の名刺や渡しとくな』


『ひかるって…漫画家なんか?』


『知らんかったん?』


『ああ…』


『K社とかの雑誌に載ってるからみてよ。勿論男性雑誌』


『うん…忙しいか?』


『徹夜したりとかもあるな…アシスタントさんも一人来てくれてる。時間に追われる毎日やな』


新伍はじっと私がしゃべってるのを聞いていた
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