私がヒールをぬいだ時
帰り道、私はお母ちゃんの行きつけの化粧品屋さんによって、美白パックをまとめて買った


『ひかるちゃん、今日は焼けてるね。洗顔は優しくして化粧水はたっぷり使わんとあかんよ。夏こそ水分必要やからな』と奥さんに言われた


家に帰り、私は風呂からあがると真っ先にパックをして化粧水で顔を調えた


『ひかるちゃん一気に焼けたな、楽しかったか?』


『楽しかったよ。バーベキューなんて久しぶりやもん。美味しかったわ』


『マツ、匂いしたんやろな、さっきからすごくぐずるんよ〜オヤツくれって』


『そうか、私の服焼肉の匂いやもんな。ごめんごめん』とマツの頭を撫でた


私は二階にあがって、クーラーをかけた


35歳のお肌に20歳のお肌…ハリも違えばダメージも違う


この時点で負けてるでしょ…そんな私が例え新伍が好きでも、あゆむちゃんには敵いません


私は手足にも乳液を塗りマッサージした


明日はM町の海岸の違う場所でスケッチしてこよう。これで明日の絵コンテが出来上がる


翌朝はあまり天気は良くなかった


薄曇りであったが雨はなさそうだ


私は自分でお弁当をつくり、水筒に冷たい麦茶を入れた


マツがワクワクしながら私を見ている


『マツはいけないよ、ひかるちゃんのお仕事なんやからね』と言い聞かせた


車に荷物を積んでエンジンをかけた


今日はこんなお天気のせいか、ほとんど人がいなかった


私は先にスケッチを済ませて、お弁当を食べた


南風が少しべたつく感じになってきた


車から少し離れたところで、私はぼんやりしていた


『何してるんや!』と声がした


私の車の横に軽トラが停まっている


『新伍、あんたこそ何してるんや』


『ちょっと親戚の家いっててん。見たらお前の車あったから』


『今日はスケッチしにきたんよ。仕事に使うから』


『もう帰らなあかんで。夕立きそうや』


空を見上げると黒い雲が立ち込めていた
< 38 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop