私がヒールをぬいだ時
濡れたまま家に帰ると、お母ちゃんがバスタオルを持ってきた


『凄かったやろ?車の中におった?』


『おったよ。車も出せる状態ちごたし』


『でも携帯でんかったやんか』


ビクッとして顔が真っ赤になった


『雨音とカミナリで聞こえんかったんよ』と言い訳した


『マツがカミナリ怖がってタオルケットに潜り込んでたんやで、ほんまこの子怖がりやわ』


『マツにも苦手あるんやな』と私は笑った


とにかくシャワー浴びて、濡れた服を洗濯した


身体は冷えてたけど唇は熱かった


新伍はキスが上手かったあのまま私はイキそうになったくらいだ…


20年だもんね…それなりに経験あるよね


デスクの上で絵コンテを始める…スケッチの海岸を描いた


ストーリーにはなかった主人公達のキスシーンを入れてみた


背景にすごく合う


風に飛んでいく麦藁帽子に気付かずキスをする二人…すごく感情が入ってしまった



私の仕事にお盆は関係なかった。康子ちゃんがいないぶん、ベタも諸々全て一人でこなした


お墓から帰って来たお母ちゃん達と仏壇に手を合わす


その後は素麺やらズイキの煮物なんかを食べてお腹をふくらませた


私は二階に戻り、また仕事を始めた18日には梅川君達がくる、それまでに仕上げておかなきゃ…絵コンテは女性雑誌の担当さんにチェックしてもらおう


結局お盆は徹夜して、原稿と絵コンテを仕上げた

16日は死んだように眠ってた…
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