私がヒールをぬいだ時
『早い仕上がりで毎回助かってます』と梅川君が言った


『先生、この絵コンテこのままでいきましょう。海岸の感じもいいし、キスシーンもかなりいいですよ』と担当の中井君が喜んでいる


『紹介します、この子がアシスタントの竹内康子さん。もと芸大で、大阪にいるころは同人誌の手伝いしてたらしいです』と私は紹介した


『竹内康子です。よろしくお願いします』


『で、男性コミック雑誌【パーフェクト】の担当さんで梅川力斗君、女性コミック雑誌【フェミニン】の担当さんで中井健士君、どちらもK社の有望株なんよ』


二人は康子ちゃんに名刺を渡した


『竹内さん、先生の仕事はこれからも増えると思いますのでよろしくお願いします』と梅川君が言った


『来年は深夜のアニメ化の話しも出てるんで、よろしくお願いします』と中井君が言った


二人を前にして、康子ちゃんはかなりパニクってる


『二人とも威圧しないでよ!あくまでも彼女はバイトさんなんだから…いつかは結婚もするのよ』


『いや…ついつい…』と二人は笑った


お母ちゃんがアイスコーヒーを持ってきてくれた

『田舎だからびっくりしたでしょう?』


『でも大阪からは1時間半なんですからまだマシですよ』と中井君が言った


『そうそう、しかも駅からタクシーで10分かからないんですから』


『最近は店も増えたし、便利な田舎になったわよ。不便さは感じない。今日は二人ともビジネスホテル?』


『そうです。ツインでとりました』


『じゃあ夜はちょっといいお店連れてくわよ。どこのホテル?』


『Hホテルです』


『市内の真ん中ね。そこからタクシー乗ってこのメモの店行って。8時に予約しとくから』


『D寺の如月…ですか』


『味は太鼓判だから。任せて』と私はわらった


二人が帰ったあと、康子ちゃんはこう言った


『先生綺麗な東京弁ですね!びっくりしましたわ』


まあ…15年も住んだらね…
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