私がヒールをぬいだ時
新大阪から新幹線に乗り、私は東京にやってきた

久しぶりの東京はまだ蒸し暑く、空気もよどんでいた


カートを転がしながら、タクシー乗り場に行き、K社に向かった


タクシーの中で梅川君に電話をして、ロビーで待ち合わせすることにした


久しぶりの出版社…


『先生、お疲れ様です。ホテルまで案内しますから』


『編集長は?』


『そのホテルで待ってますよ』と梅川君が言った

ホテルは都内のTホテルだった


部屋に荷物を置いてきて、ロビーいくと編集長が待っていた


『ひかる、元気そうだな』


『編集長こそ!でもお世話かけます。ホテルも次回はビジネスホテルとってくださいよ、贅沢すぎます』


『まあそう言わないで。晩飯でも食べにいくか?』


『居酒屋でいいですよ』


『じゃあ久しぶりに一杯いくか?』


私達は行きつけの居酒屋にタクシーを走らせた


『田舎暮らしはどうなんだ?』と編集長は熱燗を飲みながら言った


『快適です。嘘みたいに作品描けますね』


『俺も驚いてんだよ、あれだけ叱りとばしてもぎりぎりだったひかるが、一ヶ月先の原稿送ってくるわ、ネームは早いわでこっちのほうがパニックだ』と笑う


『今いいアシスタントさんついてるんですよ。彼女のお陰ですね』


『心配したよ…もう描けなくなるんじゃないかってな…あの時、病院で泣いてたお前が忘れられない』


『もう吹っ切れました。いつまでも引きずれないですもん』


『ますますパワーアップか?』


『ですね、編集長も今度来て下さいよ。妹焼鳥屋してるんでご馳走しますよ』


『W県は昔にしかいったことないな…まあ休みとれたらいってみるか』


『スケッチ出来る場所たくさんあるんです。だから直ぐに、場面が思い浮かびます。インスピレーションがすごいっていうか…』


『来年の新しい連載楽しみだな』


編集長とはこの日遅くまで飲んだ
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