私がヒールをぬいだ時
『よく流行ってますね。俺焼鳥大好きなんで』


『どんどん食べてくださいよ』


『あの…ここの親子丼…美味しいですよ』と康子ちゃんは俯きながら言った


『へええそうなんだ。あとで頼むかな。康子ちゃんはここよくくるの?』


『はい、よく来ます。大好きなんです、この店』


『気持ちわかるよ。アットホームな感じだしね』


『妹今妊娠してるのよ、臨月まで頑張るって』


『そうなんですか!それはおめでとうございます。俺も早く結婚して子供ほしいなぁ…中井はもう落ち着いてるけど、うらやましいっと思いますよ』


『梅川君に結婚願望あるとはね、意外だ』


『今は仕事が一番なんですよ。でもマンション帰った時に、あ〜誰かいてくれたらな、それが嫁さんだったり、子供だったりしたら、仕事も倍がんばれるのにと思いますよ』


『彼女さんとかいないんですか…?』


『今はね…募集中、マジで』


『いい人…できるといいですね』と康子ちゃんは笑って言った


康子ちゃん…マジで梅川君に恋してる?!瞳がハートなんだけど…


梅川君も康子ちゃんと話す時、全然違う…


もしかしてくっついちゃう?この二人!


この日初めて、梅川君と康子ちゃんは携帯番号とアドレスを交換した


帰りのタクシーの中で、康子ちゃんはこう言った


『梅川さん…明日帰っちゃうんですね…すごく淋しいです』


そして大粒の涙を零した

梅川君は一瞬かたまった


私はこのタクシーから消えたかった…
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