【短編集】フルーツ★バスケット
一週間、連絡が途絶えた。
あたしから電話はしない。
だって、もしジュンの奥さんが見付けて、不快な想いをされたら嫌だしね。
だけど、少し寂しいな。
今日は、話したかったな。
もう、眠さも限界。
布団の中で、携帯電話を握りしめながら夢の中に吸い込まれていく。
bu bu bu bu
手のひらの中から振動があり、夢の世界から引き戻された。
『もしもし?』
『久しぶり、寝てた?』
当たり前だよ。
明日も早いんだから。
『そうだよね。
電話でキスしようと思ったけど……。
またね。
ゆっくりお休み』
『うん』
半分、寝惚けていた脳ミソが完全に冴えてしまった。
今、キスって言った?
電話で?
意味分かんないよ。
気になる、気になる、気になる!!
一度開いた眼は、閉じる事なく、即行メールを返した。
返事は直ぐに返ってきた。
“寝られなくなっても知らないよ?”
既に冴えきっているもの。
今更でしょう。
“じゃ、電話するね”
写メで顔は知っているけど、実際の温もりは感じていない。
前に、冗談混じりで告白された事もあった。
でも、これは、冗談にしてはキツすぎる。
ドキドキ、と煩い心臓音が隣で寝ているパパに聞こえてしまうのでは?
そう思いながら、上着を羽織り、そっとリビングへと足を運んだ。
と同時に、バイブがなり、携帯を落としてしまった。