【短編集】フルーツ★バスケット
『どうした?
改まって』
「…………」
呼び掛けたのは、あたし。
大きく深呼吸をして、覚悟を決めた。
「あのね」
『うん』
「好きだよ」
言っちゃった。
だからって、どうなるわけじゃない。
って、無言にならないでよ。
勇気だして言ったのに。
「ごめん。
今の忘れて」
さっきまで楽しかった想いは一気に下がり
悲しくなってきた。
だって、あたし達は結ばれる事が出来ないから。
家庭を捨ててまで一緒になんて無理だもの。
『彩菓、俺も。
好きだよ』
うん。
知ってる。
前に聞いた時より真剣な口調に素直に頷いた。
神様は意地悪だよ。
♪
どうして、どうして僕達は
出会ってしまったのだろう
二度と会えなくなるなら
……
♪
「今、ユーミンが流れた」
『その曲当てようか。
リフレインが叫んでるだろ?』
当たり。
そういえば、ジュンもユーミンが好きって言ってたっけね。
本当に。
どうして、あたし達をもっと早くに出逢わせてくれなかったんだろう。
「ジュンがパートナーだったら良かったな」
『そうだな。
駆け落ちしよっか』
「……バカ」
だけど、
それはあたしの頭にも過った、密かな願望でもあった。
会いたい。
今すぐ、抱き締められたい。
子供もいるのに。
変だよね?
未だ見ぬ貴方を好きになるなんて。
あたしは、文字と音を通して心で話しているから、誰よりも貴方を知っているよ。
知らないのは、温もりだけ。