【短編集】フルーツ★バスケット
桃がハイハイしてやってきた。
ごめんね。
桃を抱っこして、涙を引っ込めてやっとの事で笑えたけど、旨く表情、造れているかな?
交わした約束は未だ、実らないまま。
あたしもパパの転勤で東京の地を離れる事になったから。
初めの頃は、互いの中間地点である京都でデートしよう、なんて話していたけど。
お互い、そう簡単に時間を造れないのも事実。
ねぇ。
ジュン。
もしも、生まれ変わったら、
今度はちゃんと、あたしを見つけてよ。
『その約束なら守れそうだな。
今までありがとう。
彩香と話が出来て、楽しかったよ。
幸せになれよ』
「ジュンも、幸せにね」
携帯の画面を覗いたからって、メールも電話も来るわけない。
だけど、貴方との繋がりが、
唯一これだけだから。
あたしは、毎日決まった時間に携帯を眺めるのが、日課になっていた。