【短編集】フルーツ★バスケット
「日野さんは、僕をベッドに寝かせて、冷たいタオルで冷やしてくれたんだ。
寝るほどじゃないのにさ、安静!! って言われたら従わざる得ないでしょ?」
「ハハッ。いきなり桜のでしゃばりモードに出くわしたんだ。
災難だったね」
でしゃばりモードって何よ。
あたしは、いつだって真剣なだけなんだから。
それに、災難にあったのは、あたしなの!!
声を大にして言いたかったけど、しっかりと言葉を呑み込んだ。
それを言ったら、折角あたしの想いが通じて?
かは分からないけど、優しい嘘をついてくれたんだから。
本当の事を言われなくて、ちょっとだけ、ホッ、としたのも事実なんだし。
「桜~、疑ったりして、ゴメン」
瑞希の出前、いつも以上に可愛さをアピールするかのように、顔の前に両手を合わせ、上目遣いときた。
やりすぎだって。
てか、あたしの方がゴメン。
美夏が、一番の親友であっても、今は言えないよ。
あたし、気付いちゃったんだ。
美夏は、仮の姿の瑞希を、好きになっちゃったんでしょ?