【短編集】フルーツ★バスケット

首だけを動かし部屋が一夜にして、模様替えされていると感じた。

違う。
あたしの部屋、じゃないよね。

部屋の香りは、いつものフルーテイとは程遠く、クールミントの香りにブルーのカーテン。


「お前、帰れるか」

帰れるも何も、


「此処……何処?」

「はぁ?」

だって、初めて見たところだもの。

そう、私の記憶している最後の場所と違う。

それとも、あたしが自分の意志で此処に来たっていうの?

信じられないよ。

狐につままれた顔をしたら、逆に怒ったように、ものすごく眉間にシワを寄せていた。

だけど、その後心配してくれている眼差しで真っ直ぐに向けられた。

「……ったく。
 ホントに覚えてねえのかよ」

だから、覚えてるって。

自棄酒飲んで、香苗に家の近くまで送ってもらって……

雪が降ってきたのを確認して──

そう、雪を手に取るように見ていて、

見てたら?

──
──
──

その後の記憶がない。


「何があったか知らねえけど、あんまり思い詰めんなよな。
とりあえず、何か着れば?」

えっ!?
目の前の人に言われ、初めて布団の中の自分の姿を確認した。

これって──?

あ、あり得ないんですけど?

一糸纏わぬ、生まれたままの姿に言葉を失った。




< 114 / 157 >

この作品をシェア

pagetop