【短編集】フルーツ★バスケット

「安心しな。
 気ぃ、失ってたから、何もしてねぇよ」

良かった。


「あぁ、アンタの唇はヒンヤリして、極上だったけどな」

──嘘!!
あたしの……ファースト・キスが

酷い。
……ヒドすぎる。
何処の誰か分からず、許可もなしに


「俺は、神楽 樹(かぐら いつき)
これで知らない奴じゃないだろ?」

否、何か違う気がする。
この場から早く去りたい。


「ねえ、帰るから服、返して」

身に付けていた服は枕元に畳んでいるわけでもなく、床に散らばっているわけでもない。

「あぁ、今は無理。
 その辺のスウェットでも着てれば?」

「どうしてよ」

「洗濯してるし」

はぁ!?


「勝手にそんなことしないでよ!!」

思わず、ベッドから身体を乗りだした


「それ、誘ってんの」

彼の言葉に身体中が熱くなり、再び布団に潜り込んだ。


「それも悪くないな」

部屋の入り口から去りかけていた身体を反転させ、大股で戻ってきた。

来ないでぇぇぇ!!


「朝食は、お前を頂こうかな」

「ば、バカな事言わないでよ!?」

「大真面目なんだけどなぁ」

──チュッ

カチコチに固まっているあたしに、軽く触れるだけのキスをしてきた…だけ。


「ご馳走様
 君って、クランベリーの味がするね」


そのまま、部屋を出ていった。

彼の姿が部屋から消えた事を確認して、壁に掛かってあるスウェットを一枚羽織った。

ブカブカ。

背、大きいんだね。

あたしには膝上のちょいミニワンピースになった。

部屋を出ると、いつ用意したのか朝食? とメモが一枚テーブルに置いてあっただけ。



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