【短編集】フルーツ★バスケット
瑞希も、あたしになんて構わなきゃいいのに。
あたしには、ミズキという心の王子様がいる。
そして、貴方を美夏が想っているだから。
朝の一件が嘘のように瑞希は、あたしの周りを付き纏わなかった。
嵐が過ぎ、平穏な一日も無事終わった。
しかし、神様は意地悪のようです。
「桜──」
「日野さん、帰ろ」
「あ、うん」
美夏と瑞希の、あたしを呼ぶ声が重なった。
帰る約束なんてしないけど、美夏はいつものことだからいつものように来ただけ。
だけど、どうして瑞希がこの場にいるの?
「市川くんの家って何処?」
「秘密」
な、何?
いつの間に二人は、仲睦まじい関係になったのよ。
楽し気にアイコンタクト、なんて 交わしちゃって。
「折角だし、三人で、帰ろっか」
あたし、今、旨く笑っているかな?
頬の筋肉が強張った感じもあるんだけど。
瑞希を真ん中に挟んであたし達は学校を後にした。
なんか、変な感じ。
美夏の、フルーテイな香りがしない。代わりに感じるのは、ほんのり甘いのに女性が持つフルーツ系やお花系とは違う。
けど、なんだろう。この香り、知ってる。
あ、そうか。
朝タップリ嗅いだんだ。
それにしては、朝とは違って懐かしい感じがするのは、何故?