【短編集】フルーツ★バスケット
袋の中身を取り出すと、花柄のシフォンワンピースとレザーのジャケットだった。
普段、ジーンズとセーターのあたしは着ることはない服。
……アイツの、趣味なのかな?
少し戸惑いながらも、これ以上怒られるのも嫌だったから、急いで支度を整えた。
着慣れない素材で、なんだか恥ずかしい、な。
「出来たか?」
ノックもせず、再び神楽が姿を表した。
「いきなり現れないでよ!!」
「いきなり、俺ん家に来たのはアンタだろ?」
…………。
それを言われると何も言えない。
「へえ。
似合ってんじゃん。」
「そ、そうかな?」
「やっぱ、服で変わるんだ。
馬子にも衣装、だな。」
「ヒドーイ!!」
あたしの叫びは無視され、何やら大きなボックスを持ってきた。
そして、サッサと椅子に腰をおろした。
「座れよ」
突然、腕をひかれコイツの膝の上に跨がる形になってしまった。
顔、近いよ。
何をされるのか、分からない。
心臓が飛び出してしまいそうな程、ドキンドキンと大きな音を立てている。
……やだ。
「ジッとしてろよ」
無理!!
ふっ、と一瞬だけ優しい笑みが見えたと思ったら、急に険しい表情に変わった。
彼の心も行動も読み取れず、あたしは石のように固まってしまった。