【短編集】フルーツ★バスケット

「アイツは、いつもカッコ付けすぎなんだよ」

吐き捨てるように、誰に言う訳でもなく神楽の言葉が地面に落ちた。

神楽は、天に昇る煙の先を見据えたまま語り出した。

あたしがあの時会った神楽のサンタクロースとコイツは、双子。

あたしが交わした、あの時からずっと行方を眩ましている。

つまり、あたしが


「最後の目撃者な訳?」

「そういう事」

まだ、よく分からない。

それとベツレヘムの星と、どんな繋がりがあるって言うの?


「最後に言ったんだよ
 あれ以上の出来はない。
 これが、成功すれば店を出せるかも、
 ってさ」

神楽さんはパティシエになる事を夢見ていた。

そして、あの時見つけたクランベリー・タルトは彼の試作品第1号。

あたしが出会ったのは本当に偶然だけど、本当に美味しかった。

艶のあるベリーに不思議な味のソースがかかっていた。
中にはバニラ風味がいっぱいのカスタードクリームとクランベリーのムースが層になってた。

幸せ感たっぷりのタルト。

でも、ほとんどの人がワインのお供だったから、それを食べた人いないかも。

どんな人が食べるのか、コッソリ様子を見に来ていたらしい。

だから、あんな格好してたのね。

でも、一つ疑問が浮かんだ。



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