【短編集】フルーツ★バスケット
この時間になると、ポツポツ、と酔っ払いたちが増えてきたようで、アルコール臭い異様な空気が流れ込んでくる。
関わりにならないうちにサッサと通り抜けたい。
だけど、こういう時に限って千鳥足の通行人に足止めを受けてしまう。
もう、邪魔。
1秒でも無駄に出来ないのに。
気が付けば、バスが沢山並んでいる。
行き先確認しないで乗ったりしたら大変な事になりそうだけど。
少し先に列になっていないバスがあるみたいだったから、仮のゴールを目指して更にスピードを上げ始めた。
と思った瞬間、腕を掴まれた。
嘘でしょ。
いつ、追い付いたのよ!
「ごめん!!
君を助けたいから
そのまま走ってくれる?」
息荒いまま、手短に話してきたのは、奴らとは違った。
思わず目を見開いて手を掴んだ主を見た。
彼がどうして、あたしを助けようと思ったのか分からない。
けれど、今は後ろから聞こえる足跡を巻く事だけを考え、全力疾走した。
風だけを感じ、唯、前だけを見据えて。