【短編集】フルーツ★バスケット
開けるのに苦戦していた檻が、上下左右と揺れている。
スイカが勝手に動き回るなんて、信じがたい。
二人は、怖いもの見たさに
一歩、一歩、と歩みよった。
祐希と涼香は見た。
箱が揺れているのではない。
スイカと思われる物体が狭い箱の中で飛び回っているのだ。
「「お、お化けスイカぁぁぁ!!」」
部屋中に響き渡る声に反応したスイカ、否、謎の物体は
箱の中で転がる仕草をしては、檻ごとその場から逃げ出した。
「待て!!
俺の夏!!」
「そんなもの、追いかけないでよ!!」
「きっと、特上に美味いスイカに違いないさ」
「動き回る物を食べられるわけないじゃない!!」
涼香はキッチンに戻り、今見ている事が現実でないことにしたいため、音楽のヘッドフォンを耳に当てた。
祐希は、逃げる箱を追いかけ始めた。