【短編集】フルーツ★バスケット
「桜には、刺激の強いキスは早すぎたな」
な、何よ。
急に、子供扱いしたりして!?
「続きは桜が、ちゃんと俺を見てくれたら、な」
そう。
それなら、安心。
貴方をちゃんと見るつもりはないもの。
なのに、心がチク、と痛みだすのは……何故?
「俺はもう、ミズキには戻らねぇけど、お前の中ではミズキがオンリーワンなんだな」
戻らないって言った?
聞き間違えなんかじゃ、ないよね。
「ねぇ、貴方は、……誰?」
「何、今更言ってんの。
俺は、今日この学校に来た市川瑞希。
他の誰でもねぇよ」
「嘘……」
だって今、確かに聞いたもの。
「もしかして、気がついた?」
コクり。
小さく頷くしか出来なかった。
本当はずっと会いたかった。でも、今証されても、それも嘘のような気がして。
「過去は、捨てたんだ。今の俺が全て」
どう受け止めていいのか、分からないよ。
たった三年で、こんなに、変わり果てるなんてさ。
「桜、ごめん。それから、……ただいま」
「おかえりなさい」
まだ、信じたわけじゃない。
けど、高鳴る胸の鼓動は早まるばかりで。
戸惑いながらも、彼の腕の中に吸い込まれるように身を委ねてみた。