【短編集】フルーツ★バスケット
「桜……」
あたしの知っている、一番安心する香り。
優しくて、ほのかに甘く、ちょっとだけドキドキする香りに
一瞬にして包まれた。
あたしは今、大大大、大好きな人の腕の中にいる。
もう、これ以上のものはいらないよ。
優しく唇を重ね合わせ、髪を撫でられて
あたしも彼の背中に
腕を回した。
互いに心と身体を許し、一つに。
だけど、あたし達は
知っている。
結ばれない事を
結んではいけない事を
だって、あたし達は血を分けあった双子の兄弟だから。
『Cherry★Kiss』
─サクランボ─
おわり
2010,07,21
花穏