【短編集】フルーツ★バスケット
裏切り
「オッシャァァァ!!
今夜がラストだ!
みんな、気合い入れてくぞぉぉぉ!!」
「「ぅおぉぉぉ!!」」
薄っすらと月が昇り、グラデーション色した空の夕暮れ時
マイクの向こうから、魂の熱い想いを込められた叫び声に身体中が、ウズウズ、と興奮していた。
ステージいっぱいに照らし出されるライト。
それに負けずと、客席に向かって、華やかなオーラを投げつけてくるのは
アマチュアバンドで、今人気No.1の
『GRAPE』
あたし、藤木 結花は(ふじき ゆうか)彼らのイチファンとして、ようやく手に入れた最前列のチケットを握りしめた。
身体が勝手に踊り出す程の、ビートの激しい音でスタートした。
跳んで、叫んで、腕を振り上げて。
普段運動なんて、かったるくて、しない。
だけど、今日この日だけは、汗を掻いても疲れる事はない。
何処からそんなエネルギーが生まれてくるのか、と思う程に。