【短編集】フルーツ★バスケット
頭と心がバラバラで、身体は言うことを効かない。
こんな事、初めてだよ。
次のライブなんて、いつに為るか分からないのに。
それどころか、彼らが解散する、って噂だって聞いたことがある。
だから、今日は特に気合い入れて踊りまくるつもりだった。
もう、嫌。
今、自分に侵されている事が嘘でありたい。
スピーカーから聞こえてくる大音量を少しでも遠ざけたく、両手で耳を覆った。
それでも聴こえてくる。
心臓にまで響くドラムのリズム、軽やかなギターの音色、あたし好みの甘い声で熱唱する彼らのハーモニー。
お願い。
もう歌わないで!
演奏しないで!
だけど、何千人と集まったこの会場を彼らが放棄するはずもなく、永遠とライブが続いた。
「あんた、何しに来たわけ?」
急に頭の上から聞こえた、冷たく刺さるような声に我にかえった。
あたし……。
気がつけば、横にも前にも踊っていた人は、居ない。
そして、声の主は──