【短編集】フルーツ★バスケット
「あたし、出来ません」
一緒に舞台(ステージ)に起ちたい、って気持ちはあったけどさ。
それとこれとは、別だよ。
一度は断ったのに、何度も何度も頭を下げられたら、ねぇ。
「頼むよ。
今回限りでいいからさ」
二人が、こんなにも必死にお願いしてくるから、
少しだけなら、良いかなって思ってきた。
GRAPEの解散の噂は本当だったみたい。
音楽祭までにキーボード担当が見付からなければの話。
もう、日にちもないから諦めていたんだって。
「正に、救世主に出逢えたって感じだな」
郡司くんが今、説明をしてくれたところ。
不思議だね。
あたしが、あの時耳を塞いでなかったら、見付からなかった訳でしょ?
嬉しいけどさ。
そんな大役を、あたしなんかがして、いいのかなぁ
「改めて自己紹介するまでもないと思うが、オレはドラムの枡田 郡司(ますだ ぐんじ)。」
「僕は、西園寺 蒼(さいおんじ あおい)ベース&ギター担当。
宜しくね。
それから、アイツはボーカルの川嶋 廉(かわしま れん)」
「藤木結花です。
よろしく、お願い、します」
廉くんに認められないまま、あたしもGRAPEに加わった。
くすぐったくて、歯痒くて、でも
やっぱり、嬉しいな。