【短編集】フルーツ★バスケット
「結花ちゃん、よく来てくれたね」
「楽譜に瞳は通して来たかな?」
「はい」
「OK~。
それじゃ、始めよう」
蒼くんと郡司くんに軽く挨拶を交わされ、あたしの弾き始めをしっかりとチェックをしてくれた。
廉くんは、チラッ、とあたしを見ただけで視線が重なる事はなかった。
あたしの頑張り、伝わるといいな。
初めて、彼らと合同練習に参加した。
初日は時間が遅かったから直ぐに家に帰されたからね。
郡司くんのドラムのスティックを鳴らした瞬間、みんなの顔が、キリッ、と引き締まる。
一瞬前までふざけあっていたのが、嘘みたいに。
そして、蒼くんがベースでリードをして、あたしがメロディーを奏で
次に廉くんの歌が……。
あれ?
今まで聞いていた迫力のある歌声は、いつになっても聴こえて来なかった。