【短編集】フルーツ★バスケット
「どうしたんだ?」
「調子悪いなら、言えよな」
「別に。
こんな、ガタガタな演奏で唄えるかよ!!
おい、女、初めてだからって気ぃ抜くんじゃねぇ!!」
あたし、やっぱり迷惑なんだね
「レン、彼女はオンナじゃなくて、ユウカちゃんだ!!
おまえこそ名前を覚えてやれよ」
「そうだよ。
それに優しくしてあげないとね」
「あたし、か.帰ります」
「嗚呼、帰れ!
そんな肝が座らないうちに仲間ずらすんな!!」
「待って……」
誰かがあたしを呼び止める声がしたけど、振り返らず勢いよく飛び出した。
廉くんのバカ。
そんな言い方しなくてもいいのに。
分かっているわよ。
あたしが、あの場に相応しく無いことくらい。
だけど、あたし。
気なんて、抜いてなかったんだよ。
こんな想いするなら、受験にだけ目を向けていればよかったね。
出逢わなければ、よかったのに。
そもそも、あの日、あたしがちゃんと彼らの歌と演奏を聞いてればよかったんだね。
このまま図書館でもいけば、いつもの日常に戻れるだろうね。
それは、良いことなんだけど
「なんか、つまんないな」
ポツリ、と呟き、足は図書館と反対方向に向いていた。