【短編集】フルーツ★バスケット
「それじゃ、あたしは」
「明日、待ってるよ」
蒼くんの言葉には応えず、曖昧に笑みを返した。
今、この場にいることが間違いだったんだよね?
──廉くんの、バーカ。
家に帰る気にもなれず、何処に行く当てもないまま、
転がっていた石ころを蹴飛ばしながら、
ふらり、と足を向けた。
何処をどう歩いてきたのかは覚えていない。
オレンジ色に反射した建物が目の前に飛び込んできた。
──学校?
人気はなく静まり返っているが、ドッシリとして、まるであたしを呼んでいるようだった。
見えない何かに誘われるように校舎に入った。
懐かしいな。
まだ、あるかな?
薄れた記憶を辿るように一つの場所にまっすぐと向かった。