【短編集】フルーツ★バスケット
只のお祭りライブなら、あたしも参加出来る。
だけど、今度行われるのは、
ライブコンテスト。
だから、
あたしに今出来ることは。
彼らを、GRAPEを精一杯応援すること。
キーボードを弾くことじゃない。
それでも、約束だから練習には行かなくちゃね。
昨日渡された楽譜に目を通し、みんなが演奏したサンプルをi-podから聴き、電車を乗り継いだ。
集合場所が目の中に飛び込んできて、あたしも心が緩んだ。
そして、曲のリズムを理解するに集中しすぎて、近付いてきた気配に気付かないでいた。
「姉ちゃん、音楽やるんだ?」
えっ!?
──誰!?
いつの間にか、数人の厳つい男の人達が、あたしを取り囲んでいた。
「俺らもバンドやってるんだけど、良かったらいれてやるよ」
「結構です」
「気ぃ強い女は好きだね」
「あの、あたし──」
「おい、コイツあの(GRAPE)メンバーみたいだぞ!」
この人達と関わっちゃいけない。
そう思った時には既に遅く、
持っていた楽譜がスッと手から消えていた。