【短編集】フルーツ★バスケット
『三浦様
お待ちしておりました』
インターフォンごしから、優しそうな年配の女性から案内を受けた。
一歩足を踏み入れると、全く別世界に迷い込んだ気がする。
見慣れないシャンデリアに、長い廊下、いくつも並ぶ肖像画が、来訪者である私を迎え入れてくれた。
「旦那様がお待ちかねです。
どうぞ、此方へ」
通された部屋はわりとシンプルな造り。
長いソファーとテーブルを挟んで一人用のソファーが二つ並んでいるだけで、誰もいない。
「少し、お待ちくださいね」
あたしは一人この広い部屋に取り残されてしまった。
暫くしてやってきたのは、ダンディーなお兄さん。
うちのパパよりは絶対若い気がする。
「お待たせしてすまなかった
三浦くんだね」
「あ、はい」
「私は、この家の主をしている
鳳 克巳(おおとり かつみ)と申す。
君には、これから世話になるな」
「よろしく、お願いします」
ぎこちない挨拶を交わしたら、クスッ、と笑われた。
恥ずかしくなって、俯いていたら優しい声が降ってきた。
「顔をあげてごらん」
断ることの出来ない甘い声色に誘われるように、ゆっくりと顔を上げた。
途端に旦那様のドアップが目の前に。
驚いて固まっていたら、そのままキスをされてしまった。
「契約成立
宜しく」
何事も無かったようにサラッ、と言い旦那様は部屋から消えていた。
──今の、何?