【短編集】フルーツ★バスケット
暫くして、ゆっくりと足音が近づいてきた。
「待たせてしまったようだな。
貴も来ているな」
「アンタが呼んだんだろ?」
「あぁ、そうだったな。
これから大事な事を話する」
二人のただならぬ様子に、あたしまで緊張してきた。
「こんなところで立ち話もなんだから、二人とも中へ」
そして、メイドを始めた事を紹介された。
初日以来、旦那様と顔を合わせていないのに、あたしの仕事ぶりをちゃんと見ていてくれたみたい。
なんだか、嬉しいな。
それから、結城が実のムスコであることも。
資産家として学校へ行かせると色々問題が起こりやすいんだって。
だから、お母さんの姓を名乗っている。
お金持ちさんには、あたしの理解できない悩みがあるのね。
でも、
呼び出されて、こんな安易な話して終わらないよね?
「実は、新しい奥さんをもらおうと思っている」
「ふーん」
「おめでとうございます」
結城とあたしは、バラバラの言葉でハモった。
奥様、素敵な人だったらいいな。
紅茶と花が似合うようなさ。
未だ見ぬ新しい奥様にを想像しながら、夢心地な気分に浸っていた。