【短編集】フルーツ★バスケット
「アイツだけは。
親父にだけは、譲らない」
いつになく真剣で、吐き捨てる様に口を開いていた。
「ま、未だ答えを決めた訳じゃ──」
「お前の答えを待つ奴じゃね。
それに、したんだろ?」
否、あれは不可抗力でって、事故よ。
自分に言い聞かせるも、キスをされた事実は消えない。
「大体、隙だらけなんだよ!!
そんなに無防備を晒すんじゃねえよ」
「あたしは別に──」
隙を作っているつもりもない。
それに、あたしは誰かの者になったつもりもない。
だけど、その先の言葉は出てこなかった。
「なぁ?」
突然問いかけられ上を向いた。